Defect 抜歯となった後の欠損治療について
虫歯や歯周病で歯が欠損してしまうと、以前のように良好に噛めないだけでなく、様々な体の不調を引き起こす場合もあります。そこで、早急に欠損部分を補う必要があります。
抜歯後の歯の代わりとして、そして患者様の残った歯を守る方法として、インプラントはお勧めの治療法です。入れ歯やブリッジと比較して、患者様の残った歯を失うリスクが最も低い治療法だからです。さらに、インプラントは「第二の永久歯」と称され、耐用年数が長いことでも知られています。定期的なメインテナンスの実施によって、天然歯と同様に長く使い続けることが可能です。
残存歯が20本以下になると、認知症や転倒などのリスクが上昇すると言われています。将来、元気で長生きするためにも、残存歯を重視した治療を一緒に考えていきませんか。
欠損歯を放置するリスク
歯を抜けたまま放置すると虫歯や歯周病になるだけではなく、歯の移動がおこり、噛み合わせが崩壊します。 噛み合わせの崩壊は顎関節症や肩こりなど全身の病気を引き起こします。 早めに適切な治療を受けてください。
RISK
歯を抜けたまま
放置するのは危険です
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顎全体のズレにつながる
歯が抜けた後にそのままにしていると、抜けた歯の対側の噛み合うべき歯がその空いたスペースの方向に伸展してゆきます。どんどん伸びてきて、欠損歯の隣りの歯に当たり、干渉し合うようになると、顎全体がずれていきます。
また、対側の歯が伸びた後で治療を開始すると、スペース確保のために、伸びてきた歯を削り短くする必要が出てきます。状態によっては歯を大きく削ることもあります。 -
その後の治療が複雑になる
欠損歯と隣り合う歯が、歯が抜けて空いたスペースに移動してきます。つまり、歯が斜めに倒れたような状態になりますが、倒れた歯の根元部分には汚れがたまりやすく、虫歯や歯周病が発生しやすくなります。次に、奥の歯が倒れてくるなど、かみ合わせが徐々に崩壊し始めます。
また、いざ治療を受けようとなった段階で、治療が複雑になってくるのです。例えば、ブリッジ治療では歯を細く削る必要が出てきます。伸びた歯の傾斜がきつい場合は根管治療を行う必要も生じ、治療は長期を要します。インプラントや入れ歯の場合も、隙間が狭いので前後の歯を削る必要が出てきます。 -
顔貌の老化が進んでしまう
経験しないとわからないものですが、歯が抜けると、お顔の印象がぐっと悪くなります。原因は、歯の抜けた部分の歯槽骨が下がり、歯ぐきが下がるため、どうしても衰えた印象を与えてしまうからです。さらに、奥歯を失ったお顔は、頬がこけてしまったり、頬が中心部に寄ってきたり、顎がゆるみ、全体的にたるんで見えたりと、顔貌の老化が著しくなる場合が多いのです。
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発音や食生活に支障が出る
歯を抜けたままにしても、即時の支障はないのですが、やがて食事や発音などの機能面に大きな支障が現れます。さらに、全身的な病気のリスクが増加し、生活の質が低下します。
例えば、食生活ですが、食べられる(噛める)食材というのは歯の本数で決まってくるのです。抜けた歯を放置して、口内を崩壊させて行くと、食の楽しみばかりか摂取できる栄養素もどんどん乏しくなってしまいます。また、発音しづらくてコミュニケーションに支障が出てくると、家にこもりがちになり、精神的にも脆弱化します。認知症リスクも上がると言われています。
インプラントと入れ歯の
違い
インプラントと入れ歯の決定的な違いは人工歯根の有無です。インプラントは外科手術を行って人工歯根を顎の骨を埋め込み、人工歯を装着して噛む機能を回復させます。入れ歯は人工歯根を用いず、歯を失った部分に取り外し式の義歯をはめます。失った歯の機能を回復させるには、最もオーソドックスな治療法が入れ歯です。しかしインプラントと比較すると、どうしても噛む力や噛み合わせに問題が生じやすくなってしまいます。
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インプラント
インプラントとは、人工の材料や部品を体に入れることの総称で、歯科では歯を失った顎の骨(顎骨)に体になじみやすい材料(生体材料)で作られた歯根の一部あるいは全部を埋め込み、それを土台にセラミックなどで作った人工歯を取り付けたもので、一般には口腔インプラントあるいは歯科インプラント、または、単にインプラントと呼ばれています。人工的な歯根を植え込み、歯を取り付けるので、見た目も使用感にも優れ、自分の歯と同じようにしっかりと噛めます。
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入れ歯
部分入れ歯の場合、歯の欠損部の両サイドや反対側の残った自分の歯に「クラスプ」と呼ばれる入れ歯維持用のバネをかけ、部分入れ歯を維持します。「床」と呼ばれるピンクの樹脂でできた部分が欠損部の歯ぐきに接するため、何となく違和感や異物感を訴える方が多いようです。加えてバネのかかった歯は清掃性が悪くなり、負担も受けやすくグラつきやすくなります。また、安定して噛む事が難しい、うまく発音できない、見た目がよくないなどの問題があります。
インプラント治療の
メリット・デメリット
インプラントのメリット
- 審美性、機能性にとても優れている
- 天然歯に近い自然な噛み心地
- 他の歯に影響を与えず
治療することができる - 対合の歯に負担があまりかからない
- 顎の骨の吸収を抑制できる
インプラントのデメリット
- 外科手術を伴うため、
誰でも
治療ができるわけではない - 保険適用外のため、
高額な治療費が必要になる - 治療期間が長くなり、人工歯を
装着するまで
不便を感じる
このように機能面や審美性などの面ではインプラントが大変優れています。また他の歯の健康を守るという観点で考えても、インプラントは優れています。しかしインプラントは保険適用外で高額というだけでなく、手術を要するため、誰でも適しているわけではありません。
入れ歯は機能面や審美性、そして噛む力に劣ります。しかし保険適用で安価に作製できること、そして治療期間が短い点でインプラントよりも優れています。 どちらがご自身に適しているのかを考え、歯科医師とよく相談して治療方法を選ぶことが大切です。
METHOD 静脈内鎮静法について
インプラント治療は、局所麻酔のみで行うことも可能ですが、痛みを無くすことができても、治療中の音が聞こえたり、振動が伝わってきたりするため、不安や恐怖を感じてしまう患者様もいます。そのような場合は、静脈内鎮静法を使用することで、リラックスした状態で治療を受けることができます。意識がなくならない程度に中枢神経系の働きを抑制します。
感じ方には個人差がありますが、「眠りかけたような、ウトウトとした状態になる」と感じ、「あっという間に治療が終わった」「まどろんでいる間に治療が終わっていた」と言われる患者様が多いです。意識を消失することなく、恐怖心や不安のないリラックスした状態を作ることができるのです。
骨の量が足りない場合
インプラントを埋め込む顎の骨の厚みや高さが足りない場合、インプラントが十分に固定されなかったり、インプラントの一部が露出してしまったりすることから治療が困難とされてきました。しかし、骨の移植や骨造成の研究開発が進み、さまざまな手法が確立されています。CTによる精密な画像診断技術も進んだことから、難症例といわれる骨量の少ない患者さまに最適な治療法をご提案し、インプラント治療を成功させることができるようになりました。
骨造成とは自家骨(自分の骨)を板状にして骨の足りない部分にネジでとめて骨の厚みを増す方法や、自家骨を粉砕して細かくしたものを骨の量の足りない部分に付け足して、人工の膜で覆って骨を造る方法などがあります。いずれにしても骨が造られるまで数ヵ月から半年の期間を要します。
また、自家骨移植の場合、下顎の先端や親知らずの付近、あるいは腸骨からブロック状に採取しなければならず、新たな外科手術が必要なため、患者さまの身体的負担が大きくなります。治療期間が延び、追加費用もかかります。
サージカルガイド
「サージカルガイド」とは、事前の治療計画の時点で集められた情報をもとに作成された、インプラントを埋入する際に用いるレジン性のガイドのことであり、「サージカルテンプレート」とも呼ばれます。実際に手術を行う時に、角度、深度、位置といった要素を事前の想定通りに再現する手助けとなり、手術のサポートや、エラー・リスクの低減を可能とします。
作製の手順としては、事前にCTスキャンを行って採取した歯型のCT画像や3Dデータをもとに、インプラント手術のシミュレーションをコンピューターで行います。そこで、インプラント体のサイズや、インプラント埋入を行う位置・角度などの要素を策定し、それらのデータをもとに、3Dプリンターによってサージカルガイドを作成します。 手術時には完成した装置を実際に用いたうえで、ガイドに沿った施術を行っていきます。
サージカルガイドを使用する利点は、インプラントの埋入がより正確に行えるという点です。また、手術前にシミュレーションを済ませることができる都合上、医師が手術中に考えることや不確定要素も減らすことができるため、手術時間の短縮にもつながってきます。さらに、インプラント埋入時のリスクを極力避けることが可能になるため、手術で切開する歯ぐきの範囲を極力小さくしたり、口内の神経や血管を傷つける可能性を下げたり、細菌感染の可能性を減らすこともできます。さらに、サージカルガイドによって理想に近い埋入が可能となるため、術後の痛みや腫れを軽減したり、インプラントをより長持ちさせたりといった、手術後におけるメリットも複数存在しています。
インプラント治療の流れ FLOW
インプラント周囲炎
インプラント周囲炎とは、インプラントの周囲組織で炎症が起こる疾患で、歯周病と同じような状態になることです。インプラント治療後、歯磨きや、歯科医によるメインテナンスが不十分になると細菌が歯肉とインプラントの境目に侵入してきます。
初期段階では、インプラント周囲の歯肉から出血がみられます。そのまま悪化すると、膿んできたり腫れたりしてきます。この状態になると、インプラントを支えていた骨が無くなっていることが多いです。重篤なケースだと、歯ぐきも痩せてしまい、インプラントを固定しつづけることが出来なくなります。インプラントの初期段階の炎症は、歯周病と同じく、自覚症状(痛み)はほとんどありません。天然の歯の歯周病治療とは違い、インプラントが細菌に感染してしまうと完治することが非常に難しいのが現状です。
インプラント周囲炎の症状
インプラント周囲炎は以下の症状を伴いますが、歯周病と同様に、明らかな痛みを伴わない場合も多く、自覚しにくいのが特徴です。
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インプラント周囲の
歯肉の腫れや出血インプラント周囲の炎症によって、歯肉が赤みを帯び、腫れが生じます。また、歯磨きの際に歯肉から出血することもあります。
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インプラント周囲の歯肉が退縮
インプラント周囲の歯肉や歯槽骨の破壊が始まると、歯肉が下がります(退縮)。進行すると、歯の根元部分が露出し、歯が長く見えるようになります。本来は歯ぐきの下に隠れているインプラントとの接合部やインプラント自体が露出し見えてくる場合もあります。
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インプラントのぐらつき
インプラント周囲の歯槽骨の破壊が進むと、インプラントが骨に固定されない状態になります。わずかなぐらつきから始まり、徐々に歯の揺れが強くなり、抜け落ちてしまうこともあります。
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インプラント周囲の
ポケットの形成ポケットとはインプラント周囲の歯肉から歯槽骨までの距離が通常より深くなっている状態を指します。歯肉の腫れが進むと、インプラントの上部 (歯の部分)やアバットメント(インプラント体と歯の接合部)と歯肉の境目に隙間ができはじめます。その中に食べかすや細菌などが繁殖し、炎症が深部へと広がって歯槽骨が破壊されます。
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インプラント埋入周囲からの排膿
インプラント周囲にポケットが形成され、その歯肉の深い部分、骨が破壊された部分に細菌が感染して炎症が進むと、膿が出てくるようになります。いわゆる排膿が見られるようになります。
インプラントQ&A
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通常、インプラント治療には健康保険が適用できないため、患者さんが全額負担となる自費診療となり、治療費は入れ歯やブリッジの場合と比べて高額になります。 しかし、インプラント治療に健康保険が適用されるケースもあります。例えば、外傷や腫瘍等の病気で顎骨を最近失った場合、その部位に骨移植を行って再建した場合、先天的に歯や顎骨を欠損している場合です。治療前の検査、インプラントを埋め込む手術、義歯による治療を含めて、治療が全て終了するまでに必要な治療費をよく確認してから治療を受けるようにしてください。
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治療を開始から治療終了までに必要な期間は、患者様の状態によって異なります。顎の骨にインプラントを埋めてからインプラントに骨が結合するまでに一定の期間が必要であり、さらに、インプラントを埋めた部位の骨の状態によって結合するまでの期間に差があります。 また、インプラント治療部位の骨の造成が必要な骨量が少ない患者様の場合には、さらに治療期間が延びることになります。 インプラント治療を受ける前に、治療期間についても、しっかりと確認してから治療を受けるようにしてください。
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インプラント埋入手術後、インプラント部が多少は腫れます。腫れる程度は状況によって異なりますが、次第に腫れは引きますのでご安心ください。 また手術部位に関連して内出血が起きることがあります。これも心配はいりませんが、不安な場合は治療前に歯科医にご質問ください。